投稿日:【カテゴリー:新型コロナ】
これって、新型コロナの
後遺症のせい?
新型コロナウイルス感染後、急性期(1〜2週間)の症状として、高熱、咽頭痛(のど痛)、頭痛、激しい咳、強い倦怠感、味覚障害や嗅覚障害、食欲不振などが起こります。
通常はこれらの症状はその後改善に向かい、おおよそ1ヶ月以内には、ほぼ元の状態に回復されます。(新型コロナ感染症:軽症から中等症Ⅰの場合)
ただ、次のような場合には、新型コロナウイルス感染症の後遺症と考えられます。
咳、呼吸苦、微熱、倦怠感、思考力・集中力の低下、頭痛、めまい感、耳のつまり感、嗅覚・味覚障害、食欲不振などが1ヶ月以上続く
コロナ後遺症については解明されていないことが多く、根本的な解決方法はまだ見つかっていません。単一の病態ではなく、いくつかの要因が重なり合った複合的な病態と考えられています。また、精神・心理的な要因が大きく関係することもあります。
患者の皆様はこうした症状を、「新型コロナ後遺症」としてひと括りに捉えがちですが、実はこうした症状を出来るだけ正確に診断・治療を行うには、その原因を分析して考える必要があります。
脳が原因と心配されることも多いかと思いますが、実際には脳そのものが大きく障害を受けて生じていることは稀で、脳神経外科でMRI検査等を受けても異常がないとなるケースがほとんどです。
ただ、多くの場合、耳鼻咽喉科領域の問題が関係していることが多いと考えています。
● 咽頭(のど)の炎症
● 上咽頭(鼻の奥、のどの上)の炎症
● 副鼻腔の炎症(蓄膿症)
● 鼻の嗅細胞や嗅神経の障害
● 舌の味蕾や味覚関連神経の障害
● 耳管(耳と鼻をつないで気圧の調節をしている管)の障害
● 気管の炎症
● 内耳(聴こえ)や前庭・半規管(平衡感覚)の障害
● 自律神経系の障害
● 胃酸の逆流による障害
当院では、これらの症状に対し、鼻咽腔喉頭ファイバー、デジタルレントゲン装置、聴力検査装置、赤外線眼振検査装置、重心動揺検査装置、(座位立位血圧比較による)自律神経機能検査などを通して原因を分析、治療の道筋を立てるようにいたします。また、これらの検査結果は患者様ご自身にも見ていただいております。
上記検査方針に従い検査した結果を患者様に説明したうえで、各診断に基づき適切な内服薬や点鼻薬を処方いたします。
また当院の特徴として、新型コロナ後重症患者様に多く見られる強い倦怠感やブレインフォグ症状、上咽頭病変が関与する症状 (後鼻漏や嗅覚異常、ふらつき感などの自律神経機能異常等) に対し、積極的にBスポット療法 (ENT療法) を行っています。
嗅覚異常を伴う患者様には、鼻洗浄や懸垂頭位での点鼻薬指導なども行っています。
異臭(焦げ臭さや腐敗臭、芳香剤臭など、通常とは異なる匂いを頻回に感じる)が関係している場合には中枢性の障害も疑われます。こうしたケースについては、大学病院の嗅覚外来も同時に紹介させて頂くようにしています。
(※1)
新型コロナ感染症の後遺症とされるものの症状は実に多彩ですが、これらの多くは一般の風邪(カゼ)のあとでも生じるものも多く、全てを新型コロナのせいにして過度に恐れるのは危険です。過度に恐れることにより、「疲れやすい、元気が出ない」と言っていろいろな治療を受け、それらが合わなくて却って身体がだるくなった場合でも、それもコロナが悪化したせいと思っておられることがしばしば見られます。
原因を分析して症状を捉え、それに応じた治療を受けていただくことが大事と考えています。
(※2)
息切れ、激しい咳等の強い呼吸器症状が続いておられる場合には、呼吸器内科によるフォローも合わせて受けられることをお勧めいたします。
(※3)
現段階では分からないことも多く、当院の治療だけでは症状の改善が思わしく進まない場合もございます。あくまで、耳鼻咽喉科として出来るだけのことを行っていることをご了解ください。
また、メンタル的なサポートにつきましては、当科の範囲を超え、また時間的な制約からご要望にお答えすることが難しいことをご了承ください。